多分、それからだったと思う。


人に見られるのが怖くなって、人を避けるようになって……


そうしているうちに、いつの間にかわたしの周りからは人がいなくなっていた。




そんな時に現れたのが、神風くん。



わたしの心を掻き乱す人。




だからあの日、たまたま空き教室で見つけたピアノを弾いてしまったのは、自分でもびっくりした。


もう絶対弾かないと思っていたはずなのに。


弾くことがまた楽しいと思ってしまった自分に、本当に驚いた。


神風くんがわたしのことを変えてくれていた。


それも、わたしの知らないうちに。



「何があったのかは知らないけどさ、」



シーンと静まり返っていた音楽室で、神風くんが口を開く。



「無理をするのと逃げるのとは違うんじゃない?」


「え?」



神風くんは、いつもわたしの予想しないところをついてくる。



「澪はピアノを弾くのが好きなんでしょ? なら弾けばいいじゃん」