「残りは伴奏者なんですが……」
「はーい」
「神風くん、何でしょう」
またもや手を上げたのは神風くん。
「伴奏者は澪がいいと思います」
わたしの予想は見事的中して、神風くんはとんでもないことを言い始めた。
クラスメイトは、わたしがピアノを弾けるのかという話題でざわめいている。
確かに、みんなの前でピアノを弾いたことは一度もない。
たまたま神風くんに聞かれてしまった、あの一度きり。
「俺、この前たまたま澪のピアノ聞いたんだけど、めっちゃ上手かったから最高の合唱コンクールになると思うんだけど、みんなどう?」
神風くんがそう言えば、クラスメイトはみんな賛成するに決まっている。
「……でも、わたしは……」
大勢の前で、全校生徒が聞くステージで、ピアノを弾くことなんてできない。