裕太……?あっ!!
私が経営しているバイトの子だわ!?
 不知火裕太君は、課長の甥っ子さんだ。
や、ヤバい。もしあがって来たりしてきたら……。

「ちょっと行って来るからそのまま食べていろ」

 課長は、そのまま席を立つと玄関に出て行ってしまった。ど、どうしよう!?
 オロオロしながら取り合えずリビングのドアを少し開けて様子を見ることにした。
 人は、窮地になるとそこに寄りたがる習性があるらしいが、まさに自分がそうだろう。
 隙間から見るとやっぱり裕太君だった。

「誠叔父さんおはよう。
 持っていた電子辞書が壊れちゃって叔父さんのを貸して下さい」

 あぁ朝からイケメン制服姿の裕太君を見えるなんて素晴らしいわ。
 ブレザーのイケメン度は、ハンパない。
ありがとうございます……。

「そうか。なら、ちょっとそこで待っていろ。
今持って来てやるから」

「はーい」

 課長が部屋に行こうとする。
すると裕太君は、私が履いていた靴に気づいた。
 ゲッ……私の靴が!!

「あれ?女性物の靴……?
 えっ?誠叔父さんが女性と一緒に居るの!?
もしかして彼女さん?」

 裕太君の表情は、パアッと明るくなる。
ど、どうしよう。 課長……上手く言い訳をして。
 これだと見つかるのも時間の問題よ!

「そんな事は、どうでもいいだろ。
とにかくそこに居ろ。分かったな?」

 課長は、そう言い部屋に入ってしまった。
ちょっと!?どうでもいいだけでは、納得いきませんよ!!
 裕太君も逆に興味を持ったらしく靴を脱ぎ出すと中に入ってきた。

 ほら、やっぱり!?
どうするのよ……こちらに向かって来ているじゃない。
 と、とにかく隠れなくちゃあ!!
私は、慌ててドアから離れると隠れる場所を探し隠れる。

 しばらくするとガチャッとリビングのドアが開いた。
ドキドキと心臓が大きく高鳴る。
 見つからないように息を潜めて隠れていた。