「か、課長……?」
私は、恐る恐る課長の顔を見る。
すると「……帰るぞ」と言って私の肩を抱きながら歩き出した。
驚くまま店内を出てエレベーターまで連れて行かれる。
エレベーターを待つ間や車に乗ってからも無言のままだ。
「あの…課長。も、申し訳ありませんでした」
私は、必死に頭を下げた。
勝手な事をしておいて……課長に助けてもらうなんて恥ずかしいことだ。
すると課長は、ハァッ…と深いため息を吐いてきた。
怒って……呆れられた?いや、怒るのも当然だけど。
ビクビクしながら課長を見つめる。
「……まさか、この顔が役立つとは……」
「えっ?」
「宮下。お前な……どうしてこうも警戒心がないんだ!?
俺が来たから良かったものの……来なかったら今頃さらに大変なことになってたんだぞ!!」
いつもの凄い剣幕で怒ってきた。
ビクッと肩を震わせる。
「わ、私は……見極めてから…断るはずで……」
必死で事情を話そうとする。
でも、結局やっていることは……周りに迷惑をかけているだけの馬鹿なまねだった。
断るどころか……ストーカー扱いされ、危うく警察まで突き出されそうになって怖い思いをしただけ。
課長や美希の言う通り最初から断っていたら、こんな事にはならなかったはずだ。
こんな怖いもせずに済んだのに、本当……私ってなんて馬鹿なんだろう。
自分に馬鹿さ加減に悔しくて涙が溢れて止まらなかった。
すると課長は、私を思いっきり抱き締めてくれた。
「泣くな。宮下が何もされてなくて本当に良かった。
あまり俺を心配かけさせるな。
お前にもしものことがあったら……生き心地がしない」
そう言いながらギュッと抱き締めてくれた。
課長……。余計に涙が溢れてきた。