「お前も同じのでいいのかって聞いているんだ。
ボーとするな!」

 慌てて返事をしたが怒られてしまった。
しかも何だか機嫌が悪いし……。

「す、すみません。同じので……お願いします」

 ビクビクしながら答える。
うぅ……怒られてしまった。怖い。
 課長が居なかったら声をかけられるのに……。

「では、しばらくお待ち下さい」

 イケメン店員さんは、クスクス笑うと軽く頭を下げて行ってしまった。あぁ、笑われた……。
 そんな行かないで……イケメン店員さん。
私は、必死に後ろ姿を見ていた。

 するとチッと課長の舌打ちが聞こえてきた。
えっ……?
 恐る恐る課長の方を見ると明らかに不機嫌そうにこちらを睨んでいた。えぇっ!?

 聞いていなかったのは、私が悪いけど
そんなに不機嫌にならなくてもいいじゃない。
 しばらく沈黙が続く。
正直……かなり気まずい雰囲気だ。

 しばらくしてソムリエの人がワインを持って来てくれた。これもまた、ちょっとワイルド系のイケメン。
 ワインの説明をして注ぐ姿は、女性をイチコロにするセクシーさがある。
 いいわ……ワイルド系。しかもソムリエだし

「どうぞ」

「ありがとうございます♡」

 見惚れながらワインを受け取る。
私は、あなたに酔っちゃいそうです♡
 するとチッとまた課長の舌打ちが聞こえてきた。
もう……せっかくの雰囲気をぶち壊さないで下さいよ!?

 チラッと課長を見るとさらに不機嫌そうにワインを飲んでいた。何なのよ?さっきから……。
 急に、こんな場所に連れて来られると思ったら今度は、不機嫌になったり。
 何を考えてるのか分からないし、こちらも気分が悪い。

 あぁ、これがイケメンの彼氏とかなら、こんな空気にはならなかったのに……。
 いや、むしろその不機嫌の姿すらカッコいいだろう。
ため息混じりに景色を見る。
 街中がライトでキラキラしていてとても綺麗だった。