私は、起き上がり手を見ると擦りむいてしまった。
足も同じように擦りむいてヒリヒリする。
 もう泣きたい気分に最悪だ。

「大丈夫か!?宮下」

 すると不知火課長が私のもとに駆け寄って来てくれた。課長……!?
 どうやら気づいて戻ってくれたらしい。

「大丈夫……です」

そう言ったものの大丈夫じゃない。
 擦りむいてヒリヒリするし、疲れてまともに動けない。もう……限界だった。

「……悪いムキになり過ぎた。
お前は、初心者なんだから、こちらが配慮しないといけないのに」

 課長は、眉を曇らせながら謝ってくれた。
課長が私に謝ってくるなんて!?
 あの鬼課長と呼ばれ人前では、絶対謝らないと思っていたから驚いてしまう。

「足と手に怪我をしているな。ちょっと大人しくしていろ」

 課長は、私をひょいっとお姫様だっこをしてきた。
えぇっ!?あまりの衝撃で言葉にならなかった。
 こ、これは、憧れのお姫様だっこだ。
ど、どうしたらいいの!?この場合……。
 混乱していると座れそうな岩のところまで連れて行って座らしてくれた。

 課長は、近くにいたスタッフに事情を話して戻って来ると持ってたハンカチにミネナルウォーターをかける。
 そして、消毒液のよう擦りむいた所を拭いた。

「……つっ!!痛いです……」

「少しの間だけ我慢しろ」

 傷口を消毒をすると自分のリュックから絆創膏を出す課長。

「絆創膏お持ち……だったんですね?」

「登山では、何があるか分からないからな。
 他の時もそうだが、もし何かあってもいいように常に準備しておくものだ」

 そう言いながら傷口に絆創膏を貼ってくれた。
そういうところは、几帳面で真面目な課長らしい。