「真相は、裕太から聞いた。
アイツは……俺達の事を凄く心配していた。
 裕太の気持ちを考えると悪いと思うが……お前のためにもその方がいいだろう。
 元々焦る必要もなかったんだ。招待客や周りにも迷惑をかける事になるが、俺の方から謝っておく。
 また日を改めてやるか、籍だけにしておく方法だってあるし、後でじっくり考えよう」

 私は、一瞬頭が真っ白になった。
だがすぐに我に返る。
 「そんなの絶対に嫌です!」と告げた。

「だがお前だって、その方が都合がいいだろ?
 好きな俳優が取材に来るなら無理して、やる必要なんて無いのだぞ?」

 確かに以前の私ならそうするだろう。
ファンの相田君のために予定をずらしてもらえるなんて、ありがたい限りだ。

 だけど、それではダメなの……。
自分のワガママで動いていたら、それこそ夫婦になる資格がない。

 私は、オタクに生きると決意していた。
イケメンが居れば独身でもいいと思っていた。
 だけど、結婚するならそれではダメでしょ!?
 夫婦になるのなら自分の都合ばかり優先するのではなくてお互いに歩み寄らないと……。
 それを教えてくれたのは、課長だった。

私は、それが分かってなかった。
 大好きな事に夢中になり過ぎて周りを疎かにしていたから課長の気持ちにも気づいてあげられなかった。
 だから、今度は……私が歩み寄らなくちゃあ!!

 私は、立ち上がると無言で壁の所に向かった。
そして、ポスターをベリッと強引に剥がした。
 また1枚剥がすとビリビリに破り捨てた。

「宮下!?お前をやっているんだ!!
やめるんだ……大切なポスターだろ?」

 課長は、慌てて立ち上がると私の腕を掴みやめさせようとした。
 でも私は、やめようとしなかった。
言葉で言ってもきっと信用してもらえないだろう。
 だから、それが私の意思表示だと示したかった。

「私……ずっとイケメンが好きで好きで、だから喫茶店を開いたんです。
 彼氏も旦那にするのもイケメンじゃないと嫌だし。
でも、無理だから一生独身でもいいやって。
 そうしたら課長にまた再会して、不器用で融通の利かないけど、凄く頼りがいがあって。
 優しい課長にいつの間にか好きになっていました!」

 伝えなくちゃあ……自分の本当の気持ちを。
イケメンではなくても課長の事が好きなんだって。

「だから、やめます。
イケメンではなくても課長の事が好きだから、もうオタクを卒業します!!」