「楠木さん、顔をあげて下さい」

「は、はい...」


それにしてもこの子、やっぱり可愛いなぁ。

佐伯さんが嫉妬するのも分かる。

可愛い子は妬まれる。

それは宿命なんだ。

そして、可愛い子には旅をさせよ。

これもまた、宿命。

旅とまではいかないけれど、色んなことを経験させてあげようではないっすか。

この私が全てお受け致します。

私は机の引き出しをザザっと開け、そこから入部届けを1枚出した。


「これにサインをしてください」

「えっ?ということは......」

「サインをすれば、あなたを新入部員として歓迎致します。私と一緒にもっと優しくなりますか?」


楠木さんは激しく首を上下に振った。

赤べこの数千倍の速さだった。

そして、さらさらと丸文字で名前を書いていく。

もちろん最後には指判子をして、私に見せつけてきた。


「出来ました!これでいいですか?」

「はい。オッケーっす」

「やったー!やった、やった、ヤッターマンっ!」


古。

けど、面白い。

この子、才能あり、だな。