「分かった。入るよ」


やっぱりオレは心底良いヤツだな。

我ながら泣けるぜ。


「いや、もうすでに入ってますけどね」


うわ、的確に指摘してきやがった。

そこは言うなよ。

とことん、空気読めないやつだな。

で、そんなコイツの名前は?


「あのさ、君、名前は?」

「普通、自分が名乗ってから聞くのでは?」

「あぁ、はい。すみませんでした」

「反省が足りないようですが」


いや、待て。

それはさっきのお前もだろ?!

なんてことは言わず、オレは喉まで出かかった言葉をごくりと飲み込んだ。


「オレは2年E組の市ヶ谷朔空(いちがやさくら)だ」

「へー。E組ですかー。じゃー、ひなさんと一緒ですねー」

「は?ひなさん?」

「東条陽登(とうじょうひなと)。ドジで頼りないっすが、やるときはやる我が部の副部長です。その彼もE組にいますので、何かあれば聞いてみてください」

「あぁ、分かった。で、君の名は?」


今の、完全に某アニメ映画のセリフだったわ。

自然と口から出てきてた。

こわ。


「久遠由紗(くおんゆさ)。変すけど良い名前なんですぐに覚えられますよね?ってか、覚えて下さい」


「はいはい。覚えますよ」


なんだよ、この脅迫紛いな発言は?

マジで意味不明。


「ワタシは隣のFっす。以上です。ではまた放課後にお迎えに上がりますので...さようなら」