「私」


唐突に口を開いた。

オレは慌てて久遠の頬から手を離し、太ももの上に置いた。

拳を握るが、力がこもってじんじんと痛い。

そんな力んでどうすんだよ、オレ。

しっかりしろ。

汗が噴き出しそうなオレに対し、久遠は冷ややかな目でこちらを見ている。

そして、その目でオレを見つめたまま、久遠は続けた。


「私、嫌いじゃないっすよ」

「えっ?」


もしや、それだけ?

と、思ったのも束の間。

次の言葉が放たれた。


「むしろ......好きっす」