それにしても、

今日も見事な星空だ。

月もひょっこりと顔を覗かせている。

ふと、この夜空に消えていった母のことを思い出す。

母は死ぬ間際、こう言ったんだ。


――月がきれいね。


月が見えない日だったのに、何を言っているのだろうとその時は思ったが、後に"あなたを愛してる"っていう意味を持っていたと知った。

母は最後まで私に愛を伝えようとしてくれていたんだ。

なのに、私は"月の見えない空もいい、でしょ?"なんて言ってしまった。

バカだった。

風情がなかった。

そもそも、大人じゃなかった。

もう少し私が賢くて大人だったら、母の本当の思いに気づけていたのかもしれない。

まぁ、今になっては後悔したって、何もかももう遅いのだが。