「ワンコ、すみません。やはり、私遠慮します。では、お先に帰って下さい」


と言って聞く犬なら良いが、こいつはそうではない。


「そんなこと言ってる場合か。お前一応怪我人なんだぞ。途中で倒れたらどうすんだよ!」

「そん時はそん時っす」


踵を返し、歩き出す。

が、しかし、

大型犬は追い付く。


「オレが困る。つべこべ言わず、乗れ。今日で最後って決めればいい」

「うーん。まー、仕方ないっすね。じゃあ、そうします」

「最初からそうしろ。ってか、乗る気満々だっただろ。直前になって遠慮するな。ったく、久遠ってやつは、ほんと目が離せない」

「いや、離してください。ストーカーでうった...」

「はいはい。分かってますよー」

「なんすか、それ」

「こっちこそ、なんすか?」


言い合いながらもとりあえず乗車させてもらう。

一応念のために言っておきますが、私にだって悪気とかありますよ。

図々しいなって思う時もあるんすよ。

けど、やっぱり楽に越したことはありませんからね。

それで使ってるだけっす。

ワンコは素晴らしき足っす。