「ワンコ、離れてもらってもいいっすか。私、泣きたいんす」


ワンコは首を真横に振る。

だーかーら、それじゃあ泣けないんすって。


「あのー、今日はわりと素直な方っすよ。泣きたいってちゃんと言ってるんすから。だから、お願いっす。泣き声聞いてても良いんで、壁向いて下さい」

「向かない。オレが全部受け止めるって決めたんだ」


ははは。

まさか、カレシ気取りすか。

私、ワンコのカノジョではないんすけど。


「なんか、そんなこと言われるとなおさら引くんすけど。まさか、ここから押し倒して...」

「バカ。そんなこと、しねーよ」

「なら、離れて下さい!」


私は力ずくでワンコを引き離した。

大型犬は忠誠心があって利口っすけど、この方はちょっと厄介すねー。

今後、躾の見直しをしなくては。