「今の体温を測ってみましょー。体温計はどこっすか?」

「あの机の上」

「あー、はい。ありました」


体温計を手にし、秒速で戻る。


「ボタン開けますよ」

「あ、うん」

「襲いませんのでご安心を」

「バカか、お前は。こんな状況でよくそんな冗談...ゲホッゲホッ」


マスクをしているとはいえ、もろに受けたら今度は私が危険なので、咳をしたら咄嗟に顔を背けた。


「腕上げて」

「へい」

「ぽちっとな。オッケーっす。」


これで体温計は準備OK。

次は毛布か。

私は勝手なのを承知の上、押入れをあさり、残っていた毛布を出し、ワンコに被せた。


「乱暴だな」

「文句言うなら帰りますよ」

「ごめん。今のはナシで」

「自分から助け求めておいて文句はナシっすよ?いいっすか?」

「はい」


と、毛布の用意が終わったところで、ピピッと音が鳴った。

脇から体温計を引っこ抜き、見てみると、


「38.3度っす。薬は飲みましたか?」

「帰ってきてからすぐ」

「食事は?」

「バナナを半分だ」


まともに食事をしていないとなると、これは治るのに時間がかかってしまう。

イコール食事を食べさせ、薬を飲ませるのが先決だ。


「食欲は?」

「ねぇよ。咳してんのに食えるかよ」

「でも食べて下さいね。今からちゃちゃっと作りますんで。薬はその後夜の分を飲みましょう。分かりました?」

「分かったよ...」


ならば、いざ出陣。