忍耐力を鍛えること10分。

店員さんが気を利かせて水の継ぎ足しに回る中、オレとルナの席には一向に来る様子がなかった。

そろそろ喉でも潤すかと右手をぴくりと動かした、その時だった。


「ワンコ先輩はこういう時、誰の顔が思い浮かびますか?」

「えっ?」


ワンコが太陽光のように真っ直ぐオレを見つめる。

その瞳からは確かな強い想いを感じた。


「ぼくはこういうおしゃれなお店にいたり、誰かが入っていくのを見たり、横を通りすぎたりするだけでも、必ずにゃんにゃんの顔が浮かぶんです。

にゃんにゃんにも食べさせてあげたいなぁとか、一緒に食べたいなぁとか、そう思っちゃうんです」


そっか...。

ルナの想いが痛いほどに伝わってきてオレの胸を締め付ける。

この苦しさは大切な人を失ったあの日の感覚と似ていた。

それと......

もう1つ。

けど、それは感じないふりをする。