「美郷先生」


私が名前を呼ぶまで先生は気づかなかった。

先生はゆっくりと顔を上げ、ようやくにこりと微笑んだ。


「由紗ちゃん......良かった、無事で」


しかし、どことなく不安で後悔や諦め、憎しみのような負の感情が先生の背後に見えた。

この不穏な空気を断ち切らねば...

私は声を張り上げた。


「先生、今すぐ私達の無実を晴らしに行きましょう!早く立って下さい!」

「それはもう......出来ないの」


先生はうつむいた。

こんな先生を見るのは一体いつぶりだろう。

いつだって先生は...柳田美郷という人物は私の記憶の中で笑っていたのに。

どうして?

どうしてこんな顔をするんだ?

だって、私達は......