「かわいい」

「ゆず、かわいい」


いくつも囁かれて、否定しようと首を振るたびに口づけられる。

隅々まで触れて、身体の奥のおくまで攻め込まれたら、もう、何一つ正気でいられなくなっていた。


「あ、ぅ……っ!」

「しってますか」


どろりととろけてしまったキャンディみたいな声が、耳元で囁く。

ただ、聞いているような、聴こえていないような心もちで、遼雅さんの瞳にうつる、うつくしいひまわりのような光彩に見とれていた。

——ずっとみていたい。


「ゆず、」

「ふ、ぁ、っ……!」

「好きな匂いがする相手には、遺伝子レベルで、惹かれているん、ですよ」

「ん、あ、」


むずかしい言葉を並べられているような気がする。

いでんし、とすこしだけ唇に乗せようとして、知らないような高い声が、自分の喉に張り付いた。

こんなにもはずかしい声なのに、遼雅さんは、いつも嬉しそうな顔をしてくれる。だから、安心してまたどろどろになってしまうのだ。


「聞こえてる?」


聴こえている、はずだ。

けれど、何を吹き込まれていたのか、すこしも理解できていない。とろとろになった視界のなかで、遼雅さんがあまく微笑んでいる。


「おれのにおい、すきですか」

「う、あ……っにお、い?」

「うん、俺の匂い、すき?」

「……っあ、す、すき?」