「かわいい」

「かわいくな、あっ」

「もうふにゃふにゃだ」

「りょうがさん、が」

「うん、俺のせいです」

「もう……っ」

「たくさんあたためてあげるから、ゆるしてくれるかな」

「こ、いうこと、しなくても……」

「うん?」


一定の間隔で背中を撫でられている。やさしさにあまえて、いつまでもこの腕の中にいたくなってしまう。

どこまでも欲張りになってしまいそうで、自分がおそろしいのだ。


「抱きしめてくださるだけで、じゅうぶん、あたたかくて」


だから、もうやめませんかと、最後まで言い切ることは終ぞなかった。



ぐるりと視界が回った。

問いかける暇もなく誰かに押し倒されて、うすいひかりの中で、あつい瞳の遼雅さんが、ためらいなく私の口を、自分の口で塞いでしまったのが見えた。

吃驚して抵抗してみても、もう何度も共有した熱に抗う方法もない。


大胆な指先で触れる。

身体中を確認して、すこし前に見た時から何かが変わってしまっていないか、つぶさに見つめられているようだ。

遼雅さんのすべてに酔わされて、何かを考えている隙もなくなってしまう。


「柚葉」

「……ゆずは」


脳内に残る音が、遼雅さんの吐息と掠れた声だけになる。

ほかのすべてがかき消されて、ただ泣きそうな瞳で、見上げていることしかできない。