「な、にを」

「そうだとしたら、飛んで行かないでね」

「りょう、」


あまく開かれている扉を手で押して、あっけなく寝室のベッドにおろされる。

丁寧な指先でベッドランプにひかりを灯した人が、確かめるように肩甲骨に触れた。


「羽根はここかな?」

「あ、くすぐった、い」

「それともここ?」


くつくつと笑って、服の上からあちこちに触れてくる。

いたずらを仕掛ける子どもみたいに問いかけて、至る所をくすぐりながら「俺みたいな男には見えないのかなあ」とふざけて見せていた。


「もう、りょうが、さん」

「うん?」


わるい手を両方とも掴んで睨んでみれば、このうえなくうれしそうな顔をする人と目が合って、言葉が出てこなくなってしまった。

狼狽えているうちに、あまい笑みを浮かべた唇をよせられる。

かわいらしく音を鳴らして、至近距離で囁かれてしまった。


「柚葉」


その名前に、一番の価値があるとでも言ってしまいそうな丁寧な発音だ。

背筋に痺れて、息が止まりかける。


「もう一回、していいかな」


ふ、と笑って、答えられない私の唇にもう一度熱を移してくれる。

今度は軽く触れあうだけではなく、啄むように食んで、下唇を甘噛みされる。


「ん、」