瞼の裏に、遼雅さんの笑顔が刻み付けられている。

たった三か月の婚姻。されどもう三か月だ。

当たり前に二人でいることに慣れてしまった自分がいた。

秘書の仕事も、家庭のことも、遼雅さんこともすべてが満ち足りている。こわいものなんてどこにもないような生活だ。

それが、自分の感情一つでくずれてしまうと思うと、言い知れない恐怖が背筋に触れているような気がした。

ひどく落ち着かない。

そわそわと歩き回ってしまっている自分に気づいて、無理矢理にソファに座った。テーブルの上に、無造作に私と遼雅さんの携帯が置いてある。


そのうち、盗み見てしまいたく、なるのだろうか?


すこし考えてみるだけでぞっとしてしまった。

遼雅さんのすべてを掌握しようとするなんて、あまりにも傲慢だ。

思ってはいても、結局遼雅さんに恋に落ちてしまったとき、他の誰かと同じようにそれをしたくなってしまうのかもしれない。


遼雅さんのお風呂はそこまで長くはない。

落ち着きなくテレビの電源を入れたら、ぱっと華やいだ光景とともに、あかるい音が鳴り始めた。

一つ息をついて、同時に遠くから、扉を開く音が聞こえてしまった。

反射的に体がぴくりと震えかける。