丁寧で熱心な口づけに、顔があげられなくなる。
今、たぶん、すごく、はずかしい顔をしている。
見せたくなくて俯いていたら、耳元にあつい声が囁き落とされた。
「柚葉」
「な、んですか」
「朝の約束、覚えてくれてる?」
『じゃあ、今夜はいいんですか?』
覚えていなかったとしても、思い出させるつもりだと感じてしまうくらいの熱だった。
俯いた顔にやさしく触れられた。曖昧な力で、遼雅さんのほうを振り向かされる。逆らうことも忘れて振り向いて、すぐ近くできらめく瞳に、用意していたすべての言葉が、くだけてしまった。
「りょう、」
「はやくきみを、食べてしまいたい」
逸らさせる気のない人が、まっすぐに見つめて、予告することなく私の唇を食んだ。
まるで今すぐに有言実行してしまいそうな熱に触れて、指先からプレートを落としかける。それすら遼雅さんの片手が軽く持ち上げて、ゆっくりとシンクの上に戻してしまった。
考える隙を与えない。こうなると、もう全部が遼雅さんのものだ。
どこから出ているのかわからないような、正体不明の甘ったるい声が自分の喉から掠れて響く。
急激に恥ずかしくなるのに、泡だらけの手に遼雅さんの指先が絡んだら、もう、羞恥心すらも手放してしまった。