まるでこの世の至宝みたいだ。私だけに見せつけるなんて、もったいないとすら思う。


「おおげさですよ」

「あはは。困らせたね、ごめん。あんまりおいしから、伝えたくなってしまった」


困ったような顔をしている。愛おしくて仕方がないのだと全力で表現されているから、どうにも上手な答えが見つけられないでいる。

どう考えても、好きにならない方法が見つけられない。あまい瞳のうつくしさで、声が喉元に絡まってしまった。


私を好きになってくれているとは思えないけれど、それとは正反対に、遼雅さんに惹きつけられる引力に逆らうこともできずに、ふらふらと吸い寄せられてしまっている。

目を見て、微笑まれる。ただその瞬間に惹きつけられて、あっけなく好きに落とされる。

恐ろしい予感で、苦笑してしまった。


「遼雅さんのつぎの結婚の、条件ですね」

「うん?」

「良い人がいれば、いいんですけど……」


わざと会話をそらして、椅子から立ち上がった。これ以上聞いていられる自信がない。

勘違いしてしまいそうで、どうにか感情をやり込めようと必死になっていた。


「ごちそうさまでした。私が片付けるので、遼雅さんはお風呂に入ってください」


表情に出ないというのは、こういうときに便利だと思う。あまりにも不自然な話題変更だったから、不審に思われていても無理はない。