遼雅さんは箸やスプーンなど、食事の道具の使い方が丁寧だと思う。

見ているほうがうっとりしてしまうような優雅な運びは、何度かぼうっと見つめてしまっていた。

三か月経って、ようやくすこし慣れてきた気がするけれど、どこまでもすてきな人であることには変わりがない。

とくに好き嫌いもない。

いつも完食してくれるような人だ。たまに何でもないのにケーキを買ってきてくれたり、有名なお菓子をプレゼントしてくれたりする。

人を愛することに余念のない人だ。


「今日もおいしかった。ごちそうさまでした」

「はい。良かったです」

「柚葉さんは料理も得意で、家事もできて、お仕事も頑張っていて、自慢のつまですね」

「ええ? 全然そんなことはないですよ」


むしろ逆だ。

遼雅さんのほうが、自慢の夫と言ってもじゅうぶん過ぎて、おつりが来てしまうような男性だ。

目が合って、柔らかに笑われてしまう。

実際には、私のことを自慢するような相手はいない。私たちは契約結婚だから、そういう関係ではないし、遼雅さんは、ただ人をあまやかしたいだけだ。

もう一度勘違いしないように頭の中で考え直してから息を吐いた。


「いつもありがとう」


金剛石のような複雑なきらめきを湛えた瞳がひかる。