嫌いな食べ物がない遼雅さんは、何を出してもべた褒めしてくれるから、本当は何が一番なのかはよくわかっていない。

ただ、祖母から届けられた野菜を使ったスープについては「やさしい味がするね」と顔をほころばせていたから、何となく遼雅さんの好きなもののような気がしていた。

ダイニングテーブルに献立を配置して、ちょうど寝室から戻ってきた遼雅さんを振り返った。

いつもと同じくやさしく笑ってくれている。

ラフなルームウェアは、遼雅さんの弟さんからのいただきものだ。

弟さんはアパレル会社で代表をしているから、選んでくれる洋服のセンスも素晴らしいと思う。

毎回のデートのたびにモデルのように私服を着こなす遼雅さんに恐れおののいていたけれど、実は弟さんのブランドを勝手に買わされていると聞いたとき、すこし笑ってしまったことを覚えている。

遼雅さんは、いつも私が着ているものとペアになったルームウェアをチョイスするようにしてくれている。

とくに言及したことはないけれど、それもまさか、今までの恋愛遍歴で刷り込まれた行動なのだろうか。


「おいしそう。……うん? どうかした?」

「いえ、食べましょうか」


聞くのが恐ろしくなって、やめておいた。