「Meine Rena
(僕の玲奈)」 

 呼びかけられてなんとか目をこじ開ければ、私への限りない愛を湛えた彼の目と出会う。

 見つめててほしいくせに恥ずかしくて、顔を覆ってしまった。
 ネイトがそっと私の手にキスをしてきて、シーツの上に手が縫いとめられる。
 指を絡め合いこすりあうだけで、どうしようもなく幸せになった。
 彼も同じ気持ちだったらしく、私達はそのまましばし、お互いの手の感触を楽しんだ。

 やがて。

「ich liebe dich
(愛してる)」

 言葉と一緒に、微笑んだ形のままネイトの唇が降ってくる。
 唇に、触れるだけのキスを贈りあう。
 柔らかい花びらだったような口づけが、段々と私の体の中に甘く降り積もる。

 全てが蕩けるように気持ちよく、逞しいネイトの腕の中は信じられないほど居心地が良かった。

 ひたひたと押し寄せる波に屈したくなくて、抗う。

「Lass mich Renas Lied hören
(僕に玲奈の歌を聴かせて)」

 希われて、あっさりと陥落した私は悦びを歌う。

 髪に落とされるキス。
 彼の首に手を回せば、荒々しい腕に抱き寄せられた。

 柄にもなく愛しているとささやけば、僕もだよと言葉だけでなく、あらゆる方法で伝えてくれる。
 まどろみの中。

「Ich liebe dich, meine Rena
(愛してるよ、僕の玲奈)

Kannst du mir sagen, warum dein Sound einsam schien?
(君の音が寂しそうだった訳を教えてくれないか)」

 ネイトはわかってくれた。
 迷子になっていた心が、ようやくこの人の許へ帰り着いた幸福感。
 でも、眠くて仕方ない。

「Reina. Bist du eingeschlafen?
(玲奈、眠ってしまったのか)

Wenn wir aufwachen, lassen Sie uns viel reden, einschließlich unserer Zukunft
(起きたら僕らの未来も含めて、たくさん話そう)」

 夢うつつだったけど。
 この幸せがずっと続くのだと涙をこぼせば、吸い取ってくれたのは、ほんの少し前なのに。