もう、時間の感覚がわからない。
 いったい何曲弾いてるの?
 その間、私たちの目はお互いから離れない。
 世界から、彼の瞳と二人の音以外のものが消滅する。

 ――有名な愛の旋律になったあたりから、ん?とは思ったのだ。
 彼の宝石のような目が甘さを湛えているのに気づいて、心臓が苦しくなる。

 ペア競技でカップルが私生活でもパートナーになる現象が、私とネイトでも起ころうとしている?
 知り合ったばかり。
 けれど、喜びも悲しみも分け合う濃密な時間を今、私たちは過ごしてる。

 勿論、競技のためと割り切っているカップルも多い。
 単なるセッションの相性を、恋人とのソレと勘違いしてはだめ。

 なのに、君が欲しいとあからさまに歌いあげられて、私の勘違いは決定的になった。

 私と彼は腕を組み、ショッピングモールに隣接しているホテルに向かった。

 そして――。