いつだったかな、自分の音も曲を構成するパーツの一つだと気づいた。
 敵対していると思ってた他の音たちは、味方で友人だった。
 刻みにしか思えない音が、信じられないくらい演奏に奥深さを与える。 
 事実に目覚めてからは、合奏の虜になった。

 シンフォニー……交響曲。
 響きが交わると訳した人、最高過ぎる!
 主旋律に絡むのは楽しい。
 だから今の私は、メロディーラインじゃなくてもいいの。

 でもね。
 ニッと自分の口角があがるのがわかる。
 楽をさせてはあげない。

 ネイトが奏でてるメロディーから高めに何音かずらしたラインで、変拍子を挿れてやったら、彼は目をまん丸くした。
 私がふふん、という顔をしたら『まいった』みたいなおどけた顔をしてきた。
 さっきまでは氷みたいに整っていたけれど、可愛い。

『ドゾー』
 カタコトな日本語で言ってきたかと思えば、私にメインを明け渡す。
『Dann zögern Sie nicht(じゃあ、遠慮なく)』

 楽しい。
 こんなに感性の合うセッションて、今までなかった。
 欲しいところに相手の音がある。
 メロディーと伴奏、入れ替わりのタイミングが、目を合わせたときにはわかってる。

 五線譜を上になったり、下になったり。
 別々のリズムを刻みながら重なって、同じメロディーを歌っているはずなのに離れていく。
 追いかけて捕まえて。
 煽っては抱きしめられた。