私が楽器を肩とあごにはさんで弓を構えると、世界的にヒットした曲が、彼の指先から流れだした。

 弾ける?とでもいいたげな視線。
 勿論と、私も彼を見つめながらメロディーを弾き出す。

 ブルートパーズのように青い目。
 彫りの深い顔立ち。
 賢そうな額の形も、鼻の高さもパーフェクト。
 あごのラインが精悍で素敵。
 弾きながらざっと見た感じ、かなりの美形。
 もしかして映画俳優のお忍びとか?
 考えていたのを見抜かれて、主旋律を奪われた。

 寄越されたウインクは『真剣じゃない子には、美味しいところはあげないよ』って意味かな。

 ジャズっぽく弾いたり、ソロアレンジを入れてきたり。
 素知らぬ顔して、ロングトーンで隙を作って誘ってくる。
 これ、『悔しいなら奪ってごらん』って挑発されてるんだろうな。

 もしかしたら私。
『あたくしが主役ですことよ! メロディをお譲りあそばせ!』ってキャラだと思われてる?
 どうせ、目つきキツイですよ……。