「エスターク? 僕も海外でよく使うホテルだが……、穣は伝手があるのか?」


『No, no. But the CEO or the owner's family is Japanese.
(いいや、ないな。けど、CEOというかオーナー一族が日本人でね)
He doesn't have a hotel near your regular inn, so it's not just right?
(彼はお前の常宿近辺にはホテル持ってないから丁度いいんじゃないか)』

 互いの母国語を交換した、不思議な会話が続いてる。
 それにしてもお兄様、発想が斬新過ぎる。
 セキュリティスタッフの一人がタブレットを差し出した。
 ネイトがさっと一読する。
 す、と彼の表情が実業家のそれになる。

「あの財閥出身の祖母を持つCEOか、いいな。……近くに財閥が持つホテルがある。玲奈、日本で『Time required 50 minutes』というのは、どれくらい客層が違う?」

 このホテルの最寄駅と、最近注目中の商業施設がある駅を示された。

「え……と」

 所要時間、て意味かな?

『Flights from Haneda and Narita are slightly faster over there
(成田や羽田からは若干、あちらの方が早く着く)』

 まごまごしているうちに、お兄様にネイトとの会話を奪われてしまった。
 お兄様の英語がネイティヴと遜色ないなぁ。
 愛の力って偉大だなぁ。
 むむ、いつか私だって。