「Part 5(その5)

Leave the treatment of the concierge
(コンシェルジュの処遇は任せる)」

 あれ。

「all right(わかった)」

 え、丸投げなの?
 意外。

「ネイトがあの人に直接、尋問したいんじゃ?」

 というより私に再会したときみたいに、文句とか嫌味とか言いたいんじゃないの。
 
「必要ない。今回の件について聴取は済んでいる」
「それはそうかもしれないけど」
「彼は、僕が関わるほどの人物ではない」

 あまりに温度のない声にネイトを見てしまえば、彼の顔は感情を抑えているレベルではなかった。

 決済すべき書類が一枚終わった、次の書類を手に取るだけ。
 そんな顔をしている。
 ネイトは切り捨てると、こんな表情になるんだ。

 ……いつか私も、貴方に切り捨てられる日が来るの?

 ネイトが、彼を凝視している私の耳に触ってくる。
 慈しみの動作なのに性的に煽られている気がして、感じてしまう。

「玲奈に対して、僕が感情を失うことはないよ」

 不安がバレてしまった。

「僕を地獄に突き落としたり、天国に連れて行くのは君だけだ」
「……ネイト。愛してる」
「玲奈」

 どれくらい見つめあってたんだろう。
 唇が近づき、少しずつネイトがのしかかってきて。

 コホン。

 咳払いが室内と、なぜか画面から聞こえてきた。

「There is no choice……(仕方ないな)」
 
ち、て舌打ちとともに、ネイトの忌々しそうなつぶやきが。
 
「そ、そうだよね。こういうことは二人きりのときがいいな。……残念だけど」

 わーっ、私、なにその思考?

 ちゅっ。
 ネイトがそれでも私の唇にキスを落とし、ぐいと私を彼の胸に引き寄せた。

 あ、あの。
 抱き寄せられる寸前に見えた、皆さんのチベットスナギツネみたいな目がいたたまれないんですがっ!