「2205号室の清算を」

 フロントに行って申告すれば、なぜかギョッとされた。若いスタッフがひそかに慌てている。
 なによ、朝帰りの女が宿代払うのがそんなに珍しい?
 無銭飲食なんてし慣れてないもの、仕方ないでしょ。
 いたたまれなさに不機嫌をコーティングしてみる。

「しょ、少々お待ちください」

 ……ん?
 ここのホテルは落ち着きとアットホームが売りなのに。
 知らない人ばかりで助かったとは思ってたんだけど、このたどたどしい感じは新人研修にでもあたっちゃったのかな。

 私の不審そうな顔に気づいたのだろう。
 ベテランらしき男性が、動揺しているスタッフを押し除けるようにして、にこやかな表情で近づいてくる。
 まずい、見覚えのある人だ。
 私が覚えているなら、相手だって絶対に識っている。