そんな日々を過ごしていくうちに、季節は移り変わっていく。

気付けば、5時を過ぎると薄暗くなり、グラウンドには、夜間照明が点くようになった。

私は、マフラーをしっかりと巻いて、照明の下で頑張る金坂さんを見ながら、校門へと向かう。

そして、21時半には、1日の授業を終えて、また、校門へと向かう。

すると、校門の街灯の下に、見覚えのある人影を見つけた。

「恵理奈ちゃん!」

こちらを見て手を振るのは、金坂さん。

「金坂さん、どうしたんですか?」

こんな時刻に学校にいるなんて……

「塾の帰り。恵理奈ちゃんと一緒に帰ろうと思って」

わざわざ!?

「あ、ありがとうございます」

お礼を言ったものの、なんだか納得がいかない。

金坂さんの通う塾は、学校より、私の自宅に近いところだったはず。

それなのに、わざわざ、戻ってきたの?

「さ、恵理奈ちゃん、帰ろ?」

私は、気になったものの、金坂さんには何も聞けず、促されるまま、並んで自転車を走らせる。

「最近、早く暗くなるから、恵理奈ちゃんが登校する姿が見えないんだよね」

えっ?

「私からは見えますけど……」

私は、思わず、首を傾げる。

「恵理奈ちゃんは見ててくれてるんだ」

金坂さんは嬉しそうに目を細める。

「あ、いえ……」

私は、なんて答えていいか分からなくて、曖昧に言葉を濁す。

「グラウンドはナイター照明がついてるから、恵理奈ちゃんからは見えるんだよ。歩道の街灯は、角のところの一個しかないから、そこでたまたま見つけられないと、もう見えないんだ」

そっか。
説明されて初めて気づいた。

私たちは、そんな取り止めのない話をしながら、自転車を漕ぎ、あっという間に私の家に着く。

「ありがとうございました」

私がお礼を言うと、

「じゃ、また明日」

と、金坂さんは爽やかに帰っていく。

ん?
また明日!?


ただの言葉の綾かなとも思ったけれど、翌日、そうではないことが判明する。

金坂さんは、毎日、私の下校時刻に校門で待っていてくれる。

なんで?

分からないまま、私たちは毎日一緒に下校する。


そうして、私たちは、連絡先を交換し、日々を重ねていく。

仕事でどんなに疲れても、勉強がどんなに大変でも、金坂さんと帰るこの時間があると思えば、いくらでも頑張れる。

今までに感じたことのない、不思議な感覚。