あー、なんだよ、とにかく早く渡せよ。急いでるんだよこっちは。


俺は一刻も早く教室へ行き授業を受けたい。遅刻なんてしたくないんだ。


仕方ない、もうちょっとだけ優しくするか。


「ありがとう、じゃあそれもらうね」


俺は精一杯柔らかい笑顔をつくった。


彼女はホッとしたようにホウッと息を吐いてぎこちなく微笑みかえしてきた。


詐欺師にでもなった気分だ。


まあ、いいや。


「じゃあ、この返事はまた今度な」


彼女がおずおず差し出してきた手紙をサッともぎとり、クルリと踵を返した。


走ればまだ1時間めの授業に間に合うかな。


そんなことを考えながら走り出そうとしたら、後ろから黒い上着をギュッとひっぱられた。


「は?おい、なんだよ」


服が伸びたらどうすんだよ。ってケチくさい心配をしていたら。


「あ、あのまだ、お話があります」