『ほんとに、千景がしっかりしてるから助かるよ。みんなのお手本になってくれよ』


普段から両親に絶大な信頼を得ているから、裏切るような真似はしたくない。


それなのにこんな理不尽なことで親を呼び出されでもしたら、たまらない。


だから、絶対にそれだけは阻止しないとな。


あの調子だと先生を説得するなんて無理そうだ。


あーあ、ついてないな俺。


なんて思いながらも諦めて歩き出そうとしたその時。


「あの、雨城くん……」


消えいりそうなか細い声が聞こえてギョッとして振り返った。


「うわっ」


まるでオバケでも見たかのように思わず声がでた。


そこに立っていたのは、そもそもこの問題の発端ともいうべき相手。


れいのお嬢様が心配そうな顔をしてこちらを伺っている。


彼女の顔をまともに見たのはこの時が初めてのはず、たぶん。