「もういいですか?」


「あ、ああ。時間を取らせて悪かったね」


「それじゃ、先生失礼します」


「ご苦労さん」


先生は少しホッとしたような顔をする。


対する俺は憮然とした表情で挨拶して扉を開けて出て行った。


「ったく、なんなんだよ」


まさかの親呼び出しの脅しに、イラっとしたがさすがに不安がよぎる。


さっきの様子だと、河井先生も本気でやりかねないな。


うちの母親はここ最近パートから正社員になったばかりだし、子供の世話でとにかく忙しい。


それに、やたらと心配症な性格だからこんな余計なことで煩わせたくない。


そうでなくても弟妹たちは、年じゅう母親に心配をかけるようなやんちゃな奴らばかりだから。


『千景は、いいお兄ちゃんだね。勉強は出来るしみんなの面倒もよく見てくれるし』