「ちょっとくらいお嬢様の話を聞いてあげなさい。あんな風にあからさまに邪険にしないように」


先生はとうとう開き直ったみたいで、はっきりと俺への要望を突きつけてきた。


先生もサラリーマンだから、理事長一族には気を使っているんだろうな。


だから俺にも相応に気を使えってか。


冗談じゃない……なんて突っぱねられたらいいけど。


立場上、たしかにそんなに強気にも出れないのが悔しいところだ。


俺は鷹月学園にはかなりお世話になっている特待生だから。


その時、チラッと壁掛け時計を見たらもうすぐ1時間目が始まる時間だった。


「まあそういうことなら、これからは気を付けます」


こんなバカげた話に付き合わされるのはもううんざりだし授業に遅れたくない。


俺は早々に切り上げたくて納得したフリをした。


今後はもう少し気を付ければいいさ。