どうしたんだろう、千景くん。あんな風に先生に反論するなんて。


いまだって苛々して何にも言わずに前だけを向いて歩いてる。


確かに河井先生に突然注意されて私もびっくりしたけど。


そのこと以外にも彼の怒りの原因があるような気がして不安になった。


「千景くん」
                               
早足になる彼の手をぐっと引っ張った。


まるで、私が一緒にいることを忘れているんじゃないかって不安になる。


「千景くん、歩くの早い。待って」


「あ、悪い」


ようやく彼はハッとしたように立ち止まってくれた。


「河井先生に叱られちゃったね。
でも千景くんが私のことを庇ってくれて嬉しかったよ。ありがとう」


素直にそう言ったら、彼は視線をさまよわせる。


「でも、昨日のことは俺のせいだから。それに……」


彼は、ため息をついて前髪をかきあげる。