「彼女は悪くないですから。
昨日のことは俺の方から一方的にしたんだし。
だいたい……勝手なことばかり言わないでください」


「……」


静かに怒っているような千景くんの冷たく光る視線に一瞬たじろいだほど。


うわっ、凄い気迫。


先生も黙らせてしまった。


「とにかく俺今日は急いでいるので、明日また呼び出して説教でも何でもしてください。ただし俺一人でいいですから。彼女は巻き込まないでください」


千景くんは一気にまくしたてると、先生に浅く一礼してからスタスタと正門へ向かって歩き出した。


手を繋いだままの私も彼に引っ張られるようにして後に続いた。


「河井先生、すみません。また明日、さようなら」


なんとなくこのまま帰るのが申し訳なくて先生に声をかけた。


先生は困ったような微妙な表情だったけどそれ以上私達を引き留めることはしなかった。