「花は俺の彼女だ。
いいか、今度花を傷つけたら殴るからな」


拳を上げて脅すような言葉を吐き捨てた。


子リスのように大人しくなった拓海を振り捨てて、走り出した。


こんな奴に構ってる場合じゃない。


たしか彼女は中庭をぬけてセレブ校舎のほうへ走って行ったはず。


しばらくあたりを探し回ってようやく見つけた。


校舎と校舎の間の狭い隙間のところで肩を震わせている彼女の小さな背中。


まだ泣いているみたいだ。


可哀想に、さっきのことがよっぽどショックだったんだろうな。


だけど、なんて声をかけて慰めたらいいんだろう。


「花」


少しだけ迷ってから、彼女に歩み寄った。


しゃくりあげるように泣いている彼女の肩に手を置くとビクッとされた。


「千景くん……」


「こっち向けよ」