ここを去ったら、もう凌久に会えない気がして…なかなか立ち上がれなかった。
『今日、楽しかった』
「俺も楽しかったよ」
こうして、会話することも最後かもしれない。
そう思うと…
段々実感が湧いてきて涙が出てきた。
「幸せにしてやれなくてごめんな、凛」
『凌久、ぎゅして最後』
と、
言うと凌久は力強く抱きしめてくれた。
もう、終わりなんだね。
この腕の中に、いられるのも最後なんだね。
本当に本当に、終わっちゃうんだね。
『幸せだったよ、ありがとう凌久』
「また会えるといいね」
凌久と離れて、カバンを持って玄関に向かった時に「凛、幸せになれよ」と言われた。
反則だよ、それは。
凌久と、もっと幸せになるつもりだった。
幸せになれよって言うなら、これからも幸せにしてほしい。
でも、
離れられなくなるだけだから…
私なりに最後の力を振り絞って
『凌久も幸せになったね』
と、
伝えて…私は、凌久の家を後にした。