それから八時を回ると、教室はがやがやとうるさくなってくる。
私は本を読んでいるフリをしながら、二人を待つ。
七海〜! とドアの方から声がして、視線をそちらへ向ければ二人が笑顔を浮かべながら手を振ってくる。
私は心をスイッチ一つで切り替えて、いい子の自分を表に出すとそれに笑って振り返す。
何も難しいことはない。
難しく考える必要はない。
いい子を演じていたら、みんなが笑う。
私も褒められる。
ほら、誰も損をしない。
世の中を上手に渡り歩くには、いい子のフリをするのが一番だった。
「今日、めちゃくちゃいい天気!」
「こういう日は外でお昼食べたいね!」
また、いつもの日常の始まりだ。
「そうだね」
だから私は、笑って答えたの。