――『御曹司って言われてるの、本当なんだよ。でっかい商社の社長の一人息子』
流奈さんの言葉を思い出す。
…お坊ちゃんにもほどがある。
でも、だからってこんな広い部屋に1人って。
寂しく、ないのかな。
「なに飲む?」
そう聞かれて、私は我に返って慌てて立ち上がる。
「いやいや!いりませんなんにも!」
冷蔵庫のドアを開けていた会長が、不審げに私を振り返った。
「いや、飲み物くらいいるだろ…」
「いりません!それより風邪…、熱は…?」
会長は勝手に、オレンジジュースを注いでくれている。
ああ、病人働かせてどうすんの、私…。
「ほとんど下がって微熱」
会長が近づいてきて、グラスをローテーブルに置いてくれた。
微熱…、よかった…。
ほっとして、ソファに座ると。
会長も、私の横に片膝を曲げて、座った。