やたらに大きいエレベーターを出て、足元がふかふかする廊下を歩く。


もはや、ホテル…。


自分が住んでいるアパートとの違いに戦々恐々としながら、602号室の前で立ち止まった。


もう一度、インターフォンを押す。


お家の人が出たらどうしよう。

つい数分前と同じ文言を心の中で繰り返していると。


鍵が内側から開く音がして、ドアが開いた。


ぴしっと直立したけど姿を現したのは、気だるげな会長で。


黒いティーシャツにクリーム色のジョガーパンツ、というラフな格好。

セットされていない髪が、少し目にかかっている。


あ、なんか、直視できないかも…。


「さっさと入れば」

ドアを開いてくれている会長に、頭を下げて入らせてもらう。


「お邪魔します…」

「スリッパ、適当に使って」


そう言って、やっぱり少し気だるそうに長い廊下を歩いていく会長。