「おはよ。そよちゃん」
本当にこのひとは自由すぎる。
「……みうさん来てましたよ」
「はは。そういうことか。せっかちだなあ、あの子も」
「誰かに会いたそうにしていました」
「だろうねえ」
まさか、みうさんが来るのわかってて地下に逃げ込んだんじゃ……。
「そよちゃん」
「はいっ」
カイくんがどれだけ自由でも
人でなしでも
こうやって呼ばれるだけでシッポを振ってしまうわたしは
……カイくんのペット以上になれるわけもなく。
いや、それ以上なんて
望まないけれど。
望んじゃいけない。
カイくんがわたしの気持ちに応えてくれることは、ない。
「あの子」
カイくんが、お店にいるのは
寂しい子と一緒に食事してあげたいとか
栄養のあるご飯を作る手伝いがしたいとか
そういう理由ではなく
「あっちのテーブルにいる。ちょっと長い髪の男の子」
「……あの男の子が。どうかしましたか」
「感じるねえ。闇を」
探っているんだ。
怪物の、気配を。