───お姉ちゃんになれたらって、何回思ったんだろう
「絃〜、準備できた?」
階段の下から双子の姉、大場泉(おおばいずみ)の声がする。
「ごめんね!今行く!」
昨日夜遅くまで漫画見てたから寝坊しちゃった。
『いってきまーす』
学校までは歩いて20分くらい。
お姉ちゃんの泉は本当は違う高校に行く予定だったけど、私の学力がないせいで同じ学校に通ってくれている。
「泉さん、絃ちゃんおはよう」
後ろから聞き覚えのある声がした。
「藤田くん、稜くんおはよう」
声を掛けてくれたのは、私と同じクラスの
藤田優志(ふじたゆうし)くん
そして、私のすきな人……でもある。
「うぃっす」
優志くんの隣にいる小さい(怒られるかな)男の子は
お姉ちゃんの同じクラスの鳴瀬稜(なるせりょう)くん
あんまり話したことないし、無口だし…ちょっと怖い
「泉さん、この間貸してくれた小説すごい面白いです!
続きとかあったら借りたいんですけど……」
「わぁ、本当?絃は小説とか読まないから嬉しい、明日持ってくるね」
優志くんは、お姉ちゃんのことがすき。
お姉ちゃんと優志くんは小説の話をしながら先に行ってしまった。
「わ、私たちも行こっか?」
「……」
うわーん、鳴瀬くん無言だー…
いつものことだけど私嫌われてるのかなぁ
「あんなやつ早く諦めればいいのに」
「え?なんか言った?」
「なんでもない」
そう言って鳴瀬くんはスタスタと歩き出した。
「羽月ちゃんおはよう」
教室に入ってすぐに私の前の席に座る、
榎本 羽月(えのもとはづき)ちゃんに声をかけた
「絃、おはよう」
羽月ちゃんとは中学からの親友で、
お姉ちゃんには言えない事とかの相談に乗ってくれてる。
羽月ちゃんはお姉ちゃんのことあんまり好きじゃないみたい
「アイツはまた今日も一段とテンションが高いな」
アイツって言うのは優志くんのこと。
「お姉ちゃんと小説の話で盛り上がってたからね」
「小説なら自分だって話できるけど。」
「羽月ちゃんが読んでるのは百合でしょ!」
そう、羽月ちゃんはいわゆる腐女子なのだ。
「絃ちゃん〜」
女の子に囲まれながら優志くんが私のところに来た。
「どしたの?」
「頼みたいことがあるんだけど…HRのあとちょっといいかな?」
「え、あ、うん!」
頼みたいことってなんだろ?
たぶん、お姉ちゃんのことだろうな。
「ほらー、席つけー」
先生が教室に入ってきて、HRが始まった。