「一樹!今から会う奴ってもしかして族に入ってんの?」




一樹はそう言う裕二を無視して、いかにも古ぼけたコンビニに入っていった。

正確にいうと、一樹の知り合いの不動産がくれた元コンビニだった場所だが・・

裕二は、答えない一樹に向かって何を言うでもなく、ただ一樹の後ろについていく。

 


 「おいっ。ここはカンカン隊の私有地だぞ。勝手に入ってくるな!」




入ると同時に、一人の男が突っかかってきた。

何回もここに来たことがあった一樹だが、その男の顔は知らない。

 


 「お前、新入りだろ。新入りはいいから梶呼んでこいよ。」




だが、豪の族の奴は大体良い奴だったから普通にタメでしゃべる。

が、新入りにはそんなこと分かるはずもなく、一樹に向かって突っかかってきた。

ちなみに梶とは豪の右腕的存在の1人である。




 「なんで梶さんのこと知ってんだよ。」




 「豪のダチだからな。新入りのお前は知らないだろうが、結構ここらで知れ渡ってんのよ。俺の名は。」




本当のことを言ったのだが、男は全く信じようとはしない。

しかし、そこでいちいち説明するような一樹ではない。

そばに裕二がいることを忘れて、1発殴りこんでしまうのが一樹なのである。

けっして怒ってそういうことをしようとかそういうわけではないのだが、説明するなら言葉じゃなく体で・・という癖が、昔から少しも変わっていない。