「私の友達、みんなエステやパーティーの話しかしなくて……。好きな本の話を誰かとしてみたかったから……」

そう話す愛華は、奏多が知っているお金持ちのクラスメートとは全く違った。優しい雰囲気をしていて、とても温かい。

「いいよ。愛華さんはどのシーンが好きなの?」

奏多は警戒するのをやめ、愛華に質問する。すると愛華は嬉しそうに「二人の結婚式のシーンが一番好き!愛する人との特別な儀式だもの」と言う。その飾らない笑顔は奏多が今まで見た女の子の中で一番綺麗だと感じた。

「でも、二人は最終的には死ぬことを選ぶんだよね。切ないな……」

奏多がそう言うと、愛華は「そうね。だから、恋をしたらロミオとジュリエットみたいな悲劇で終わらせたくない。ちゃんと結ばれたいの。どんな人であっても」と微笑む。

その日を境に、奏多と愛華はこっそり話をするようになった。初めて高校でできた話せる人に奏多は嬉しくなり、二人の予定が合う時には庶民の遊びを知らない愛華を遊びに連れて行った。