「何でお弁当に伊勢海老やら神戸牛が入ってるんだよ。一ヶ月の食費ってどれくらいになるんだ……」

クラスメートが自慢げに見せ合っていたお弁当の中身を思い出し、奏多はモヤモヤしながら卵焼きを口に入れる。くどくなくふんわりとした優しい甘さが広がっていった。

十五分ほどでお弁当を平らげた後、休み時間が終わるギリギリまで奏多は読書を楽しむ。栞を抜き取り、早速続きを読み始めるとガサッと背後から音がした。

「誰?」

奏多が振り向くと、お嬢様らしいふわふわとした長い髪をした女子生徒が立っていた。髪につけられている髪飾りはブランドもので、奏多はうんざりしてしまう。

「えっと……俺、邪魔だったら向こうに行こうか?」

女子生徒に訊ねると、女子生徒は「違うの!ただ、あなたと話したくて……」と頬を赤く染めながら言う。

「あなたの読んでる本、ロミオとジュリエットよね?私、そのお話が大好きなの」

そう言った後、女子生徒は奏多の近くに座る。そして自分の名前が愛華だということと、親は会社を経営していて一人娘だということを話してくれた。