父の帰りが遅い夜、私は母の機嫌をとった。




父の悪口を夜中まで聞き、寝坊した朝だってあった。




父の変わりに母を守るんだって、ひとりで誓った夜もあった。




父の愛人が遊びに来た日、私は父とも女とも口を利かなかった。










私は母の味方だった。










父のことが好きだった。





だけど。





私は母の味方だったのに。











「でも……」



母が再び口を開く。



「所詮、他人だもの」












乾いた笑いがキッチンに響いた。