「話があるんだけど」



昨晩、久しぶりに姿を見せた母が、私に言った。



「なに?」



うながされるまま、キッチンテーブルで向かい合う。


話される内容はわかっている。




離婚だ。




父に他に女がいるのは知っているし、母に内緒で会ったこともある。

驚きはしない。





「離婚しようと思うの。この家を出るわ」





淡々と言う。


その唇の形も、髪の毛の質だって、私はこの女に、よく似ている。









やっぱりな、と心の中で毒づいた。